【中3理科】わかりやすく教える仕事の授業(4)―動滑車編

スポンサーリンク

こんにちは、育伸開発です。

前回の「【中3理科・指導案】仕事の教え方(3)―仕事の原理(斜面)」では仕事の原理(斜面)の模擬授業を行いました。今回はその続きで動滑車を使うパターンになります。また、このページからご覧になっている生徒さんなど、授業を初めから受けたい方は「【中3理科・指導案】仕事と仕事率のわかりやすい授業(1)」からお読みください。

動滑車を使ったパターンを理解する上でのポイント

  • 動滑車を使ったパターンに慣れるよう問題を解く
  • イメージは2倍の距離を引っ張る代わりに非力な人間は力半分
  • 動滑車と定滑車の違いを理解する

今回の模擬授業は動滑車を使ったパターンになりますので、その部分のみ触れてあります。では模擬授業を始めます。

動滑車が入るとどうなるか

先生:では次の内容を学習していこう。今度は動滑車を使うパータンだ。動滑車というのは動く滑車のことで、これが入ると人間は物体が動く分の2倍の距離を引っ張らなくてはいけなくなるよ。

先生:その代わりに力の弱い人間は半分の力を出すだけで物を引き上げることが出来るんだ。そんな道具だよ。もう一回言うよ。人間は2倍の距離を引っ張る、その代わり非力な人間は半分の力で済む。これがイメージすべきポイントだ。

動滑車を入れて持ち上げる

先生:では早速具体的な例を出すから見ていこう。ここに動滑車があるよ。固定されていると定滑車と言うんだけど、この滑車は固定されていないね。だからひもを引き上げるとと動くんだ。そんな滑車を動滑車って言うよ。ちなみに今回の授業では動滑車やひものの重さ、摩擦量などは考えないことにするよ。

先生:そしてそれに4kg(40N)の質量の物体がぶら下がっているとしよう。お約束として動滑車の大きさや重さは考えないようにしてね。で、今ひもの長さが1mだとしよう。これの上端が赤い部分の天井(A)に固定されていて、今からもう一方の部分(動滑車の右側)を上向きに天井まで引っ張るよ。ということは、天井まで何m引っ張ることになる?

生徒:1m

先生:そうだよね。動滑車の右のひもの一番下から天井まで1mだからね。そうすると・・・

先生:上の図の通りになるね。そして今、2本のひもで動滑車を支えている状態だ。もちろん動滑車の左側と右側の部分のひもの長さは同じだね。ということは、今動滑車は最初の位置から何m上がったかな?
生徒:0.5m
先生:正解!

先生:1mのひもを同じ長さの左側と右側の部分に分けているんだから、半分の0.5mになっていることがわかる。だから0.5m持ち上がった言えるね。ということでさっきのイメージすべきポイントを確認するよ。人間は動滑車が動いた距離(0.5m)の・・・何倍を引っ張ったの?

生徒:2倍

先生:いいね。2倍の距離である1mを引っ張ったね。そしてこのとき、40Nの質量を動滑車の左右2本のひもで支えているね。ということはここの(左側の)1本とここの(右側の)1本、何Nずつの力で引っ張ってるのかな?

生徒:40N…かな?


先生:残念、これはその半分の20Nずつになるよ。黄色の動滑車の左と右で20Nずつだと合計40Nになって40Nの質量の物体を引っ張り上げられるよね。でも40Nずつにすると合計80Nになって、物体に働く重力より大きすぎるね。ということで、20Nずつになるんだ。ちなみにその20Nは物体にかかる重力40Nに対してどれくらい?

生徒:半分

先生:そのとおり、いいね!ということで、人間は半分の20Nの力で引っ張り上げたんだ。ではここで、さっき言ったイメージすべきポイントを確認するよ。人間は頑張って何倍の距離を引っ張るの?

生徒:2倍

先生:そうだ。その代わり人間は非力だから力はどれくらいになる?

生徒:半分

先生:ナイス、正解!もうわかった人が居ると思うけど、動滑車を使うパターンでも仕事の原理が成り立つよ。この後でも具体的に見ていくけど、間が行った仕事量と物体に行われた仕事量が同じになるんだ。

人間が行った仕事量を見る

先生:では本当に仕事の原理が成り立っているか確認しよう。まず人間が行った仕事量は何Jになるかだ。

先生:滑車の右の部分を引っ張ってるから20Nの力を加えているね。そして1mの距離を引っ張り上げている。ということは何J?

生徒:20J

先生:正解だ。20N×1m=20J だ。もうみんな仕事量はすぐに出せるね。

物体に行われた仕事量や他の仕事量を見る

先生:一方で物体が行われた仕事量を出してみよう。

先生:物体の質量は40Nで、上がった距離は0.5mだったね。これって何J?

生徒:20J

先生:素晴らしい。40N×0.5m=20Jだからね。ということで両方とも20Jだ。更に聞くけど、人間が直接40Nの物体を0.5m持ち上げたら仕事量は何J?

生徒:20J

先生:その通り!これも40N×0.5m=20Jだ。これで今見た3か所全てで仕事量が20Jと変わらないことが確認出来たね。動滑車という道具を使っても使わなくても仕事量は変わらない。そんな仕事の原理通りの結果が出たね。ここまでわかったかな?

生徒:わかりました。

先生:そうか、ナイス!



定滑車と比較するパターン

先生:そうしたら次に行こう。具体的に一緒に問題を解いて更に慣れていくよ。これから出てくる物体は全て3㎏(30N)で2m上がることにするね。そうしたらまずは・・・

先生:これをやっていこう。青い部分の滑車は天井に固定されているから定滑車と言うよ。定滑車だけだと道具を全く使っていないのと同じことになる。だから引っ張る部分と物体の部分とでは働く力の大きさも移動する距離も同じになるんだ。

先生:そうすると確認するよ。今物体がされた仕事は30Nで2m上がるから…30N×2m=60Jになるね。当然引っ張る部分の仕事量も同じ60Jになるんだけど、60Jを出す式は何N×何mになる?

生徒:30N×2m

先生:いいね、正解だ。図で以下の通りだ。

先生:定滑車の場合は物体の部分も人間が引っ張る部分も全く同じ式になるから、今言ってもらった通り、30N×2mとなる。そうしたら次は、以下のような・・・

先生:動滑車が入っているパターンを見ていくよ。これも同じ質量のものを同じ高さ上げるから、物体が受けた仕事量は60Jになるはずだ。では下に引っ張る部分の仕事量を出す式は何N×何m?

生徒:15N×4m

先生:素晴らしい。動滑車が1つ入った時、人間は2倍の距離を引っ張る代わりに非力で半分の力で済むんだったね。だから引っ張る距離は(物体が2m上がっているのでその2倍の)4m、必要な力は(質量30Nの半分で)15Nだ。すなわり15N×4m=60Jとなるんだ。

*下の図も参考にしてくださいな。動滑車(黄色)の重さは考えませんので、物体の重力30Nを持ち上げるために動滑車左右のひも2か所で15Nずつ(合計30N)で引っ張り上げています。

先生:そうしたら問題条件を加えよう。今、物体が秒速50㎝の速さで2m上がっていったとしよう。この場合、下に引っ張る部分で何秒引っ張り続けたと言える?

生徒:5秒

先生:いいね、正解。物体が200㎝(2m)上がるのだから、1秒で50㎝上がるのを4回(200÷50=4回)繰り返すことになるね。ということは物体が上がっている4秒と同じ時間、人間も下に引っ張るね。引っ張る時間も物体が動く時間も同じじゃないとおかしいんだ。では、この時の人間が行った仕事率は何W?

生徒:15W

先生:素晴らしい。60Jを4で割って1秒あたり15Jの仕事量だね。だから15Wだ。では、この時に物体がなされた仕事の仕事率は何W?

生徒:15W

先生:正解!みんな間違えないですごいね。仕事の原理で仕事量はどこも60Jだし、動いている時間もどこも4秒だね。だから仕事率もさっき出した15Wと変わらないんだ。では最後に質問だ。人間が4秒下に引っ張ったんだけど、そのときの速さは秒速何㎝?

生徒:秒速100㎝

先生:すばらしい。人間は2倍の距離を引っ張るんだけど、1秒あたり40㎝の2倍の距離と言ったら、1秒あたり80㎝となるね。だから秒速80㎝だ。4秒で400㎝(=4m)引っ張っていることがこの段階でわかっているから、両方を÷4して1秒あたり100㎝と出してもいいよ。ここまでで区切り良くなったけど、質問ある?

生徒:ありません

先生:ナイス!よく頑張りました!

*これで基本的な内容は授業で扱いました。みなさんお使いのテキストに沿って問題演習を行うと良いでしょう。



難易度が高い問題(定期テスト向け)

ここから先は定期テスト対策授業向けの内容になっています。中間・期末テスト前に行うと良いでしょう。もちろん通常授業の続きとして扱っても構いません。

先生:では定期テスト対策の授業ということで、実戦問題をやっていこう。斜面を使うパターンも含めて力をつけていくのが狙いだ。問題プリント配るから、条件よく見て確認して、書かれている問題も一通り目を通しておいて。その間に図を書いておくよ。

問題
同じ斜面、同じ質量の物体、滑車を使って、以下の図1~3のように物体を動かした。物体は全て同じ高さまで上がったものとする。滑車やひもの重さや摩擦力は考えない。

先生:お待たせしました、図を書きました。では復習も兼ねつつ一問一答形式で進めていくよ。問題数は全部で10問だ。一緒に解いていこう。プリントを裏返しにしてみないようにして下さい。ノートかメモ用紙に番号振って答えを書いていってね。では…

1問目

1問目:図1で真上に持ち上げる時にかかる力は何Nですか。

先生:何Nになった?

生徒:20N

先生:いいね。1㎏=10Nだから両方2倍して2㎏=20Nだ。そうしたら次…

2問目

2問目:図1で真上に持ち上げた時の仕事量は何Jになりますか。

先生:何Jになった?

生徒:36J

先生:ナイス。もうこの辺は間違えないね。20N×1.8m=36Jだね。では次…

3問目

3問目:図2図3ともに仕事量は何Jになりますか。

先生:答えは?

生徒:36J

先生:素晴らしい。

先生:どの図も同じ質量の物体を同じ高さまで上げてるから、仕事の原理により仕事量は変わらないんだ。ということで、2問目で出した36Jと同じ仕事量になるよ。では次…

4問目

【実験2】
図2のように、斜面にそって2㎏の物体を60㎝/秒の速さで4秒かけて引き上げた。
4問目:図2で物体が移動した斜面の距離は何㎝ですか。

先生:答え何になった?

生徒:わかりませんでした

先生:これは難しかったね。答えは240㎝だ。60cm/秒(=秒速60㎝の速さ)とあるので、1秒あたりで60㎝移動させているね。合計で4秒移動させてるから、60㎝×4秒=240㎝となるよ。ちなみに240㎝は2.4mと等しいね(100cm=1m)。では次…

5問目

5問目:図の2で物体を引くときの力の大きさは何Nになりますか。

先生:5問目だけど、これはノートかメモ紙で計算していいよ。

先生:何Nになった?

生徒:1.5N

先生:あー、惜しい。答えは15Nだよ。□N×2.4m=36Jであることを考えて、36÷2.4を計算しよう。そうすと15Nと出てくるよ。

6問目

6問目:図2で物体を引いた時の仕事率は何Wですか。

先生:何Wになった?

生徒:9W

先生:ナイス、正解。

先生:仕事の原理が成り立つから、上の図のようにどの部分も仕事量が36Jだね。「4秒かけて引き上げた」とあるから4秒で36Jだ。だから、両方4で割って「1秒あたりで9J」と出せばいいね。9 J/秒、すなわち9Wだ。では次…

7問目

【実験3】
図3のように動滑車を入れ質量2kgの物体を60cm/秒の速さで動かした。*緑色の部分だけ動滑車です。
7問目:図3において、非力な人間が引っ張った所の力の大きさは何Nになりますか。

先生:何Nになった?

生徒:10Nかな

先生:残念、答えは7.5Nだ。これは難しいね。実は・・・

先生:5問目で出したとおり、斜面を斜めに引っ張り上げる時に必要な力が15Nだったね。これと同じ斜面だから、やっぱり物体にかかる力の大きさも15Nなんだ。そしてその力を物体に加える時、動滑車が入っているから非力な人間は半分の力を加えるだけでいい。だから15N×0.5=7.5Nだ。15N÷2=7.5Nと「÷2」をしてもいいよ。では次…

8問目

8問目:図3で物体は何m動きましたか。

先生:何m動いた?

生徒:わかりません

先生:これは2.4mになるよ。図2の斜面の距離を240㎝と出してあったね。240㎝=2.4mだ。同じ斜面を使って同じ高さまで上げているから、同じ2.4mだよ。では次…

9問目:下向きの矢印部分で非力な人間は何m引っ張りましたか。

先生:何mになった?

生徒:4.8m

先生:素晴らしい。緑色の滑車が動滑車になっているね。動滑車が1つ入ったことで、非力な人間が半分の力である7.5Nで引っ張ったら、物体が動いた距離である2.4mの2倍の距離を引っ張るんだったね。だから4.8mだ。次…

9問目

9問目:人間が引いた時間は何秒になりますか。

先生:何秒になる?

生徒:4秒

先生:いいね、優秀だ!実験2と同じ速さで物体が動いているから、物体が動いた時間も図2と同じ4秒だ。ということは同じ時間の4秒間人間が引っ張ったことになるね。

10問目

10問目:人間が引っ張った部分の速さは何㎝/秒になりますか。

先生:何㎝/秒?

生徒:120㎝/秒

先生:やった、正解、天才!人間は4秒で480㎝(=4.8m)引っぱっているから1秒あたりで120㎝だね。ということで120㎝/秒。

先生:別の解き方もあるよ。斜面を移動する物体の速度が60㎝/秒だけど、人間は2倍の距離を引っ張るから、1秒あたりの引っ張る距離を2倍して120㎝/秒とやってもいいよ。

先生:みんなよくできました。そうすると、実は今まで伏せて置いてあったプリントを解けるようになってるんだ。では今度は同じ問題を自力で解いて定着度をあげよう。問題演習はじめ!

*これでプリントの問題を一通り解けるようになりました。スムーズに解けるよう練習しておきましょう。(プリントの問題と答えをダウンロードしてご利用下さい。)

動滑車と斜面の問題 sizeA4.pdf (161 ダウンロード)

動滑車と斜面の問題ー解答 sizeA4.pdf (131 ダウンロード)

いかがでしたか?参考になれば嬉しいです。次回の模擬授業はてこを利用するパターンになり完結です。

以下へつづく

【中3理科わからない人必見!】仕事の授業(5・完)―てこ

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする